シングルアンサー・マルチアンサー等の選択式設問で一般的に言われていることは、前方にある選択肢ほど選ばれる確率が高いという点だ。人間の目線は順番に事物を追う。当然最初の選択肢から順番に目を通すことになる。このとき一番最初の選択肢は良かれ悪しかれ印象に残る確率が高くなるというわけだ。印象に残る確率が高くなるからと言って、選ばれる率が高くなるわけではないことは理解しておくべきである。ただ、似たような選択肢が並ぶ場合、最初に配置した項目を選ぶ傾向にはあるだろう。
ただし、これは選択肢が2つや3つ程度であってはあまり意味が無い。人間は一度に複数個の事物を認識出来る能力があるからだ。最初の選択肢から数個までは、同時にその内容を把握しているだろう。だからこれは選択肢が多い場合(10個程度以上)に有効と言えるだろう。
アンケートは、その特性を知っておかないと予期しない結果を生み出すことがあることは、何度も紹介している。裏を返せば、アンケートの特性を知っていれば期待する結果に近づけることも可能である、ということも忘れてはいけない。「近づけることも可能である」というのは、必ずしも「期待する結果にする」ことが出来る訳ではないからである(例えていうなら「戦争は悪ですか」というアンケートに対して、意外と「悪と思わない」回答が多かった、するデータを得ることはできるが、「悪ではない」という結果をもたらすには無理がある、ということである)。
アンケートを実施する目的というのはたいてい二つあり、そのどちらかである。一つは誰でも知っているとおり、「広く意見を収集する」ということにある。ただ漠然と情報が何もない状態から、アンケートでデータを収集することによって一定の道筋をつけることである。例えば自社の食品をより売れるようにするため、その味がどの程度受け入れられるかを知りたい場合などは広く意見を収集するだろう。
もう一つアンケートを実施する目的がある。それはある理論に対しての裏付けを取ることが目的である。裏付けを取るためにアンケートを実施しているのだから、少なくともその裏付けがくつがえってしまうようなデータが集まってしまっては意味が無いのである(そもそも無理な理論は、一番最初に述べた戦争の例のようにどうやってもくつがえってしまうのが関の山であることはいうまでもない)。
良かれ悪しかれ、アンケートは上記二つの理由で実施される。今後数回にわたり、後者「意図に近いデータを収集する」ためのアンケートの特性について紹介していくことにする。
以前にフェイスシートをアンケートの最初に配置するのがよいのか、最後に配置するのがよいのか、それぞれを比較する記事を投稿した。両者それぞれメリットやデメリットがあるが、フェイスシートのことをとやかく考えない方がよい場合もある。前後の配置を、とにかく固定するようなパターンだ。
例えば、毎回異なるアンケートモニター(パネルともいう)に回答してもらう場合を考える(固定のモニターを持たず、都度モニターを集めるような場合)。この場合は設問等やアンケートの性質によってフェイスシートの配置位置をよく検討すべきである。アンケートモニターにとって、どのような流れで設問が配置されるのかはまったく未知の状態であり、いつ回答をやめてしまうのかわからないからである。ここでいう「流れ」とは、設問配置の抑揚のことで、例えば最初にとても簡単な設問、次にやや難しい設問・・・というように設問の難易度(回答しやすさ)と設問順のことを指している。
それに対して、常にアンケートモニターが同じ場合を考える。自社で固定のモニターを抱えていて、そのモニターに回答してもらうような場合だ。当然モニターは自社のアンケートに対しては回答し慣れていると考えてよいだろう。設問の配置を検討する人が同じことも多いので、設問の流れも類似してくることが多いはずだ。であれば、逆にモニターにとっては期待する場所にフェイスシートがあって欲しいことになる。「いつもは設問の最初にフェイスシートがあるはずなのに、今回は最初から具体的なことを聞いてくる」となれば回答者は少し身構えてしまうのではないだろうか。
普段定期的にアンケートを実施していて、いつもとは毛色の違うアンケートを実施する場合はフェイスシートの位置を変えることによって新鮮味が増すことがあるが、回答者の心理的負担を減らすという意味では同じ位置にフェイスシートがあったほうが負担は小さくなるはずだ。
ウェブアンケートやエクセルアンケートだと、紙のアンケートでは発生しない問題がある。それはシングルアンサーを作る際、プルダウン型の回答方法を選ぶか、ラジオボタン型の回答方法を選ぶか、という点である。どのような場合にどちらのタイプを使えば良いのか解説しよう。
まず、プルダウン型は表示スペースが少なくてすみ、ラジオボタン型は表示スペースがある程度必要である。プルダウン型は「プル」「ダウン」して初めて選択肢を見ることができ、ラジオボタン型は最初から全ての選択肢が表示された状態である。
インターネット上の各種入力フォームでプルダウンの要素はどのような場合に使用されているだろうか。圧倒的に多いのが都道府県を選択する場合だろう。例えば住所を入力する場合の都道府県の入力は九分九厘プルダウンだ(一部手動で入力する場合もあるようだが)。他には年齢層(10代、20代・・・)や、年収(300万円以上400万円未満、400万円以上500万円未満・・・)などであろう。例はいくらでもあるかもしれない。しかしラジオボタンはもっと多彩に使われている。商品購入の理由を聞かれたり、好きなたべものであったり。これらの違いはなんだろうか。
プルダウンの設問は、選択肢の内容をみなくてもほぼ想像がついたり、選択肢の項目一つを見ただけで残りの項目が簡単に想像がつくような設問に使用するのだ。例えば都道府県。日本には47都道府県あり、仮に全都道府県をリストアップできないとしても、項目の内容はよくしっているはずだ。年齢層はどうだろうか。どんな具合に区切ってあるのか全て見てみないとわからない、ということもあるかもしれない。しかしそれはそもそも設問が悪すぎる。たいていは5歳刻みや10歳刻みで、特定の年齢以上は(例えば60歳以上といった具合に)ひとつの項目にまとめられている場合もあるだろう。つまり各項目が自明もしくは自分の該当する項目がおおよそどのあたりに位置しているかわかるものに対してプルダウン型設問を使用するのである。
それに対してラジオボタンは、回答者には選択肢の各項目が想像できない場合に使用する。例えば「一番好きな果物はなんですか」と聞かれても各選択肢を見るまでは自分の好きな食べ物があるのかどうかもわからない。たとえぶどうが好きで、項目の1番目がりんごでも2番目以降に何が配置されているのかわからないのだ。みかん、ばなな、いちご、かき、なし・・・。ぶどうという選択肢は含まれているかどうかもわからないし、含まれていたとしてもどの順番に配置されているかまったくわからないのだ。
つまりラジオボタンは選択肢の全てを確認してから答えなければならない場合に使用するのだ。一方プルダウンは選択肢を全て見なくてもあらかじめ回答すべき内容が理解できそうな設問の場合に使用することになる。
同じシングルアンサー型設問だが、それぞれ用途に応じて使い分ければ回答者にとって答えやすいアンケートになることは間違いないだろう。
エクセルで作るアンケートも大詰め、基本機能の最後はマルチアンサー型設問(チェックボックス)の作成だ。といっても何ら難しいことはない。作業内容はシングルアンサーで作ったラジオボタン(オプションボタン)と同じだ。エクセルのフォームメニューから「オプションボタン」を選ぶ代わりに「チェックボックス」を選択し、シート上でクリックする。必要な個数分だけ同じ作業を繰り返し、各チェックボックスの値を適切な内容に変更しておけばそれでいい。チェックボックスはそれ自体単体での動作なので、他の項目と排他制御になるオプションボタンと違って、これだけで作業も完了だ。グループボックスを使ってグループ化する必要もない(グループ化しておいても差し支えない)。
ここまでの内容で、アンケートの基本要素フリーアンサー、シングルアンサー、マルチアンサーを作成することができるようになった。残りの作業としては、回答者が不用意にフォームを変更してしまわないようにすること(ロック機能)、不要な画面要素の排除、そして簡単に集計できるようにするための工夫などを次回以降で紹介する。